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『潮が舞い子が舞い』を読んで、僕の心が舞う

2024 2/22
レビュー的なこと マンガレビュー
2023-10-202024-02-22

久々にどハマりしてしまった漫画に出会ったので、こりゃもう是非とも紹介せねばと思い記事にしました。


少年少女の”あかんたれで愛おしい日常”を描いた漫画『潮が舞い子が舞い』(以下『潮舞い』)が凄まじく面白く、その空気感と間とテンポとセンスにやられて瞬く間に虜にされてしまった。

※この記事の画像は、全て『阿部共実 潮が舞い子が舞い/©️少年チャンピオン・秋田書店』より引用しております。

『潮が舞い子が舞い』扉絵

潮が舞い子が舞い
作者:阿部共実
『別冊少年チャンピオン』(秋田書店)、『マンガクロス』にて連載中

海辺の田舎町にある高校の2年4組の生徒達を中心とする「あかんたれで愛おしい日常」を阿部独特の台詞回しで描く。紹介文に「男子も女子も、みんなが主人公。」とあるとおり、回ごとに様々な人物に焦点が当てられ、人物像や周囲との関係性が掘り下げられていく。(Wikipediaより引用)

潮が舞い子が舞い 8 (8) (少年チャンピオンコミックス) コミック
阿部共実
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目次

愛おしき思春期の群像劇

高校2年生。あなたはどんな青春時代を過ごしただろうか。

しょうもないことで悩んだり怒ったり大笑いしたり。仲の良い友人とバカ騒ぎしたかと思えば、絡みの少ない人との距離感に戸惑ったり、そんな甘酸っぱいものに溢れていただろうか。

もしくはクラスメートにどう思われているのかヤキモキしたり、素直に自分を出すことが出来ずに誰かを意図せず攻撃してしまったり、自分を大きく見せようとイキってしまったり、そんな灰色じみたものに塗れていただろうか。

思春期には誰もが自分なりの、バカでジタバタで愛おしい時間を過ごしたはず。

『潮舞い』はそんな思春期のジタバタを描いた、海辺の田舎町に暮らす少年少女の群像劇だ。

読んでて「こんなんだったなあ」と「こうだったらなあ」を同時に味わえる。--『潮が舞い子が舞い』1巻より ©️阿部共実

センスとテンポがいかつい

群像劇である『潮舞い』は特定の主人公はおらず、仲の良いグループ内でのやりとりやいち生徒の思考など、一話ごとにさまざまな視点で描かれる。

『潮が舞い子が舞い』1巻より ©️阿部共実

思わず「そうだよな…」と唸ってしまうセリフが頻繁に出てくる。 -『潮が舞い子が舞い』1巻より ©️阿部共実

ただただ何気ない日常回もあれば、ボケとツッコミが激しく飛び交うコント回もある。じっと物思いにふけるような詩的な描写や、微笑ましい恋愛模様も描かれることもある。

下校時に地元の定食屋で食って駄弁って帰る。ただそれだけを描いた回。なんだか懐かしく、羨ましい。- 『潮が舞い子が舞い』4巻より ©️阿部共実

話ごとに空気がガラリと変わるにも関わらず、どの話も間とテンポが秀逸で、読んでいくうちにたちまち空気に巻き込まれ、そしてこの町の中に引き込まれてしまう。

女子高生がその恥ずかしがり方はせんやろ。とこちらがツッコんでしまう。-『潮が舞い子が舞い』7巻より ©️阿部共実

読んでいると、思わず懐かしい気持ちになったり「なんでそうなるねん!」とツッコんでしまったり、モノローグをじっくり反芻してしまったりと、心が色んな方向に引っ張られる。気がついたらこの世界にどっぷりとハマってしまうのだ。

フラットなタッチゆえに漂う空気感

絵のタッチは阿部共実先生の過去作品と比較するとかなりフラットな雰囲気になっている。

個人的な感想ではあるけど、過去作では人物そのものが濃く描かれていたが、今作では人物の描写はシンプルに、かつ余白を多用することで、その場の空気や人物が抱える感情などがより如実に表現されているように思える。

雨宿りの一幕。雨が粒で表現されていて、時間がゆっくり過ぎているかのよう。 -『潮が舞い子が舞い』3巻より ©️阿部共実

過去作の『空が灰色だから』や『大好きが虫はタダシくんの』などでは、少女の突き抜けんばかりの痛々しさが話題になっていた。

『空が灰色だから』1巻より ©️阿部共実

今作では対照的に良い意味で毒が抜けた感じがある。いやもちろん思春期特有のイタさもヤバさも十分描かれているのだが、どれも等身大のものに落ち着いていている印象だ。箸が転げても笑い転げるバカさ加減と、阿部共実先生ならではの狂いっぷりが絶妙に噛み合っている。結果、「この子ら、めっちゃオモロいやん。いかつぅ」と思ってしまうのだ。

愛されキャラの一万田さん。過去作だとドン引きされて距離を置かれるようなキャラも、容赦のないツッコミが入ることで”しょうがないやつ”になる。 『潮が舞い子が舞い』1巻より ©️阿部共実

セリフ回しにも’阿部節”ともいえる面倒くささがありながらも、それがキャラクターにきちんと落とし込まれていて、それが少年少女のテンションの高さと拗らせ感の表現になっているんじゃないだろうか。

懐かしさと羨望を同時に味わえる作品

『潮舞い』はよくある”高校生の日常を描いた風のキャラマンガ”ではないと思う。

登場人物はみんなキャラが立ってるのにキャラを押し出した作品ではなく、あくまでも高校生の持っているくだらなさや可愛さや不安などが折り重なった日常を描こうとしている、そんなマンガだ。

『潮が舞い子が舞い』1巻より ©️阿部共実

「この子ら面白いな」「このノリ最高」と楽しみつつも、「そうそう、自分もこんなんだったわ」「こんなやついたなあ」と懐かしく感じられ、それと同時に「自分の学生時代もこうだったらなあ」「友達にこんな奴らがいたらなあ」と心底羨ましくなってしまう、そんな気分にさせてくれる。

「くそねむい。くそねむイーハトーブ。くそねむイーハトーブリ大根」
「じゃあもう帰るか」

あの頃の自分も平熱でこんな会話をしていたし、今でもふとしたときにそんなテンションになる。高校時代のバカな自分と今の自分はまだ地続きなんだという安心感と、もうとうの昔に過ぎ去り二度と取り戻せないという寂しさや懐かしさを覚える。『潮舞い』はそんな”ノスタルジックな気分”にさせてくれる、大人の青春マンガだと思う。

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